保護命令制度とは?

保護命令制度とは、DV防止法によって創設されたものであり、裁判所は、
DVの被害者からの申立てにより、加害者に対し接近禁止命令などを発します。

離婚協議をするにおいて、夫の激しい暴力が予想される場合には、
保護命令制度の活用を通じて解決することが必要となります。
 

保護命令が発令される要件

身体に対する暴力、生命に対する脅迫があったこと

配偶者から身体的暴力や生命に対する脅迫を受けた人が、さらに身体に対する
暴力によって、その生命や身体に重大な危害を受ける恐れが大きいとき、

裁判所は、被害者からの申立てにより、その生命や身体に危害を加えられること
を防止するため、保護命令を発することができます。

ここで「身体に対する暴力」とは、生命または身体に危害を及ぼすものをいい、
刑法上の暴行罪や傷害罪にあたる行為が該当します。

よって、身体に対する不法な攻撃とはいえない性的行為を受けた被害者や、
侮辱などの精神的暴力を受けた被害者は、申立てをすることができません。

「生命等に対する脅迫」とは、被害者の生命や身体に対して害を加えることを
告知してする脅迫行為が該当します。

害悪の告知は、「殺してやる」「腕をへし折ってやる」などが該当しますが、
告知された害悪は、他人を畏怖させるに足りる程度のものでなければなりません。

保護命令の申立者は次の者であること

配偶者・元配偶者

保護命令の申立ては、配偶者に限らず、元配偶者、内縁関係(事実婚)で
あった人も申立てをすることができます。

婚姻中、内縁期間中には暴力や脅迫はなく、離婚後、内縁関係を解消した後に
身体的暴力や生命等への脅迫を受けた場合は、申立てをすることができません。

交際相手・元交際相手

生活の本拠を共にする交際をしている相手から暴力を受けた場合も、
保護命令に関する規定が準用され、保護命令の申立てをすることができます。

生活の本拠を共にしない、単なる恋人、同性に至らない交際相手、婚約者などは、
申立てをすることはできず、ストーカー規制法等で対応することになります。

生命または身体に重大な危害を受けるおそれが大きいこと

生命または身体に重大な危害を受けるおそれが大きいときとは、
加害者の行為により、殺人、傷害等の危害が及ぶおそれがある状況を指します。
 

保護命令の内容

被害者への接近禁止命令

接近禁止命令は、命令の効力が生じた日から起算して6ヵ月間、加害者に対して
「つきまとい」や、「はいかい」を禁じるものです。

「つきまとい」とは、しつこく被害者の行動を追随することをいい、「はいかい」
とは、被害者が通常所在する場所をうろつくことをいいます。

この接近禁止命令は、退去命令、子への接近禁止命令、親族等への接近禁止命令、
電話メール等の禁止命令とあわせて行うことができ、再度申し立てることも可能です。

退去命令

退去命令は、命令の効力が生じた日から起算して2か月間、加害者に対して
生活の本拠からの退去を命じ、住居近辺のはいかいを禁じるものです。

退去命令だけが発令されるケースはなく、接近禁止命令とともに発令されます。
荷物の持ち出しや転居などのために利用され、再度の申立ても可能とされています。

子への接近禁止命令

裁判所は、被害者本人への接近禁止命令とあわせて、被害者の子への接近禁止命令
を発令することができます。

発令の要件
  • 被害者がその成年に達しない子供と同居しているときであって、
    配偶者が幼年の子供を連れ戻すと疑う足りる言動を行っていること。
  • 被害者がその同居している子供に関して配偶者と面会することを余儀なく
    されることを防止するため必要があるとき。
  • 子供が15歳以上の場合は、その子の同意があること。

 
配偶者が子供を連れ去って人質とするようなことがあると、
被害者は面会を余儀なくされ、接近禁止命令の意味がなくなってしまいます。

そこで、法は、被害者本人への接近禁止命令とともに、その子供に対する
接近禁止命令をも発令することにより、接近禁止命令の実効性を高めています。

親族への接近禁止命令

裁判所は、被害者本人への接近禁止命令とあわせて、被害者の親族等への
接近禁止命令を発令することができます。

発令の要件
  • 配偶者が被害者の親族等その他被害者と社会生活において密接な関係を
    有する者の住所に押しかけて著しく粗野または乱暴な言動を行っていること。
  • 被害者がそれを止めさせるため、配偶者と面会することを余儀なくされることを
    防止するため必要があるとき。
  • その親族等の同意があること。

 
配偶者が、親族等に対して大声で面会を要求するようなことがあると、
被害者が面会を余儀なくされ、接近禁止命令の意味がなくなってしまいます。

そこで、法は、被害者本人への接近禁止命令とともに、その親族等に対する
接近禁止命令をも発令することにより、接近禁止命令の実効性を高めています。

電話等禁止命令

裁判所は、被害者本人への接近禁止命令とあわせて、被害者への電話やメール
などの禁止命令を発令することができます。

被害者への電話等禁止命令が発令されると、命令を受けた者は、
DV防止法10条2項の、1号から8号までの行為が禁止されます。

DV防止法10条2項1号から8号
  1. 面会を要求すること。
  2. その行為を監視していると思わせるような事項を告げ、
    またはその知り得る状態に置くこと。
  3. 著しく粗野または乱暴な言動をすること
  4. 電話をかけても何も告げず、また緊急やむを得ない場合を除き、
    連続して電話をかけ、ファックスを送信し、電子メールを送信すること。
  5. 緊急やむを得ない場合を除き、午後10時から午前6時までの間に電話をかけ
    ファックスを送信し、電子メールを送信すること。
  6. 汚物、動物の死体その他の著しく深いまたは嫌悪の情を催させるようなものを
    送付し、またはその知り得る状態におくこと。
  7. その名誉を害する事項を告げ、またはその知り得る状態におくこと。
  8. その性的羞恥心を害する事項を告げ、もしくはその知り得る状態におき、
    またはその性的羞恥心を害する文書、図画その他の物を送付したり、
    それを知り得る状態におくこと。

 

保護命令の申立先

保護命令の申立てを行うことができる裁判所は以下のとおりです。

  • 相手方の住所地を管轄する地方裁判所
  • 申立人の住所や居所を管轄する地方裁判所
  • 暴力が行なわれた地を管轄する地方裁判所

 

申立てをするときの注意点

裁判所に提出する保護命令申立書は、DV加害者も閲覧することができます。
住所や居場所を秘匿している場合には、十分注意が必要です。

申立書には、以前の住所を記載し、現在の住所や居場所については、
直接口頭で裁判所に伝えるようにしましょう。

同じく、警察の対応票も、DV加害者が閲覧することができますので、
警察にDVの相談をする場合も、対応票には以前の住所を記載しましょう。

そして、本当の居場所は直接警察に伝えるようにし、
問い合わせがあっても教えないよう、必ず念押しをしておいて下さい。

また、DV加害者から捜索願が出される場合がありますので、
それを受理しないよう、警察に事前に要請をしておきましょう。
 

保護命令の申立書の記載事項

保護命令の申立書には、次の事項を記載します。

  • 配偶者からの身体に対する暴力や生命等に対する脅迫を受けた状況
  • 配偶者から身体に対する暴力や脅迫を受けた後の暴力によって、
    生命または身体に重大な危害を受けるおそれが大きいと認めるに足りる状況
  • DVセンターの職員または警察職員に対し、暴力・脅迫に関する相談をし、
    援助または保護を求めた事実の有無、その事実があるときは、その日時や
    場所、相談の内容、取られた処置の内容

 
保護命令の申立てを受けた裁判所は、DVセンターまたは警察職員に対して、
保護を求められた時の状況や処置の内容を記載した書面の提出を求めます。

被害者が、DVセンターにも警察にも保護等を求めた事実がない場合には、
前述の状況を記載した書面について、公証人の認証を受けたものを添付します。
 

保護命令の審理、即時抗告

保護命令は、原則として口頭弁論またはDV加害者が立ち会うことのできる
審理の期日を経て発せられます。

裁判所における保護命令の平均審理期間は約12日となっていて、
多くの場合、加害者を呼び出したその日に保護命令の言い渡しがなされます。

保護命令の申立ての裁判に不服のある加害者は、高等裁判所に対して即時抗告
の申立てをすることができます。

即時抗告は、裁判告知を受けた日から1週間以内にしなければなりませんが、
即時抗告の申し立てをしても、保護命令の効力に影響はありません。

ただし、取り消し原因となることが明らかな事情について疎明をすれば、
抗告裁判所は、申立てにより保護命令の効力の停止を命じることができます。
 

保護命令の取り消し

保護命令を発した裁判所は、保護命令の申立書をした被害者から
取消しの申立てがあった場合には、保護命令を取り消さなければなりません。

また、保護命令を受けた加害者が、その発令から3カ月経過した後、
退去命令の場合は2週間が経過した後に保護命令取消しの申立てをした場合、

裁判所は、申立てをした被害者に対して異議がないかどうかを確認し、
異議がない場合には保護命令を取り消さなければなりません。

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